トランスジェンダーと仕事をテーマに「当事者で就職・転職活動を経験した先輩」へのインタビュー企画。
・仕事につけるの?
・カミングアウトのタイミングは?
・そもそもカミングアウトはする?
・一部の人だけに伝えたい?埋没派?
・履歴書の性別欄はどっち?
・服装は?化粧は?
トランスジェンダー当事者の人が疑問に思うことを解消できたらと思い、インタビューを思いつきました。
先輩の実体験を聞くことで、具体的にどんなことに気をつけたらいいのか、何をいつまでに準備したらいいのか、就活本に載っていない生の声を届けます。
もちろん、良かった点だけでなく「失敗したな」という意見も、隠さずに書いていきますよ。
今井さんってどんな人?
現在、今井さんは大阪の会社で働いているんですよね。
今回は「トランスジェンダーの就職活動」について体験談を聞かせてください。まずはじめに簡単な自己紹介をお願いします。
プロフィールと治療歴はこんな感じです!
今井さんのプロフィール
今井
1997年生まれ。兵庫県宝塚市出身。
四年制大学を卒業。
新卒で飲食業の会社へ入社(2020-)
現在は仕事と並行して、LGBTの啓発活動にも取り組んでいる。
- 2017年7月 19才 カウンセリング開始
- 2018年10月 20才 性同一性障害の診断書獲得
- 2020年3月 21才 男性ホルモン治療開始
戸籍上の性別変更「女→男」予定は?
転職インタビューの前に性別変更について考えを教えてください。
それでは就活のお話を伺って行きましょう!
就活で目指した業界職種・会社の規模は?
ーー大手企業を希望していた理由は?
就活を開始したときってトランスジェンダーの自分が、何よりも大きく存在している時期だったんですよ。
だから「LGBTに寛容であるか、そうでないか」が判断基準でした。
大手企業はダイバーシティの推進が当たり前のようにあり、中小企業ではLGBTの取り組みを行っているか分からないので、志望企業から外していました。
ーー何社「説明会、エントリーシート、面接」の流れで受けましたか?
まず、合同説明会で30社ほど話を聞いてみました。
10社にエントリーシートを送り、面接は6社ほど受けて、最終的に2社から内定をもらって就活を終えました。
就活活動のとき「LGBTフレンドリー企業」を意識したか?
振り返って考え直すと、かなりイレギュラーな企業の選び方してますよね(笑)
どんな基準で「LGBTフレンドリー企業」か判断しましたか?
就活を始めたときの治療状況
服装、エントリーシートは具体的にどうしましたか?
そのときは性別欄にマルをするストレスが軽減されて良かったです。
ーー性別欄があるエントリーシートのときはどうしましたか?
氏名は本名、写真はメンズスーツにネクタイ、男性にマルをつけました。
そして、自己PR欄でカミングアウトしました。いま考えると「ありえない内容」です。
ーー「ありえない内容」とは?
私はトランスジェンダー当事者なので、人と違った観点から物事を考えられます。
一番の強みは「いろんな立場にたち物事を考えることができる」ところです。
こんな感じで、どうにか前向きなアピールができるよう考えましたよ。
冷静に見返すとむちゃくちゃですけど、就活のときは必死だったんですよね。
カミングアウトのタイミング
他の学生に聞かれたくなかったのと、最後なら時間を確保できると思いました。
そして、以下の4点セット聞くようにしていました。
- 男性として働くことは可能?
- トイレの利用は?
- 手術を受ける際の休暇について
- 社内にトランスジェンダーの人はいますか
人事担当者の反応は?
LGBTの存在を知らない、人事担当者もいましたよ。
直接、就活生と話をする担当者は特にLGBTの知識が必要となってきますね。
会社の看板を背負っている感じがします。
まわりの就活生はどんな反応?
LGBTに対して偏見があっても、その場で態度に出されることはありませんでした。
ーーどんなエピソードですか?
5人1組に分かれ、ディスカッションをおこなうグループワークがありました。
そのときに、僕は自分を男と認識していますが、同じグループの人からは女として扱われてしまう。
僕の認識:男3人、女2人
他の人の認識:男2人、女3人
「グループで旅行に行くならどんなツアーにしますか?」というテーマで、男女の部屋分けなど「女の子が奇数だから〜」と女扱いされるのが苦痛でしたね。
未治療(声が高い、可愛い感じ)周囲からすれば女ですよね。周囲に悪気がないことも分かります。
そして、グループワークの限られた時間で、自分の事情を話すことに時間を使えないと判断。
我慢の連続で乗り切りましたが、正直、課題に集中しづらいなって思いましたね。
カミングアウトを決めた理由
自分らしく働ける環境を見つけるためにカミングアウトを選びました。
ーー今井さんの考える自分らしく働くとはどんな姿ですか?
自分に嘘をつかないこと。本当の自分の姿を嘘で塗り固めたくないです。
嘘をついた状態だと仕事だけに全力を注げず、自分の持っているパフォーマンスを発揮できません。
過去に自分を偽り、失敗した経験もひとつの理由ですね。
ーー過去にどんな経験があったんですか?
大学生のアルバイト時代の話になります。赤いロゴで有名な某アパレル会社でアルバイトをしていたころ、最初は女性として「レディース」の服を着ていました。
でも、やっぱり我慢できず「メンズ」の服を着て働きたいと伝えたんですよ。
そしたら、当時の店舗が百貨店のテナントだったため、百貨店としてお客さんの目があるからダメだと却下されました。
他の店舗は男女関係なく服を選べるのに、その店舗だけダメだったんですよね。
結局、希望する性別の服が着れないことに納得できず辞めました。
ーー他にもありますか?
某有名な石鹸屋さんでもありました。
面接のときに「トランスジェンダーです」とカミングアウトしてから採用されました。
アルバイトが始まり2週間ほど立ったとき店長から「メイクをしてください」と言われたんですよね。
とてもびっくりしました。「え?女性店員としてのあつかい?」
会社はLGBTフレンドリーを掲げているのに、店舗レベルになると浸透されていないのかって驚きですよ。
外側だけの発信より、社内研修を通じて内側をしっかり固めることも企業は必要だなと考えました。
結局、某有名な石鹸屋も辞めました。
トランスジェンダーであることが就職活動に不利益を感じたことはありますか?
企業対応でよかった点
内定をもらった会社なんですけど、嬉しかったです。
就職して働いた感想
今は、更衣室・トイレともに男性用を利用しています。
カミングアウトの範囲はどこまで?
アウティングもなく、自分から言わない限り広まることもないですね。
いま仕事について悩んでいる人へのメッセージ
自分の力が発揮できる会社と、出会えるまで行動あるのみです!
まとめ
今回は就職活動の体験をインタビューしました。
アルバイト時代の経験から自分らしく働くことを決意。
「仕事だけに集中できることが嬉しい」と明るく話されている姿が印象的な今井さん。
セクシュアリティに関わらず、自分に嘘をつかず正直に働ける環境がもっと増えるべきなのではないでしょうか。
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