僕が読んでおもしろかった、勉強になった、他の人にオススメしたい本を紹介する「書斎コーナー」へようこそ。
3冊目の今回は辻村深月さんのツナグを紹介。
作者の辻村深月さんは「かがみの孤城」で2018年の本屋大賞を受賞されています。
生きていればいつか死ぬ。
いつどこで自分の前に、悲しい出来事が訪れるかはわからない。
できることなら起きてほしくない。でも、誰にでも起こること。
大事な人を亡くす、だれもが生きていればいつか経験。ごくごく当たり前のことかもしれません。
辻村深月さんの「ツナグ」は死を題材に盛り込まれているのに、読んでいて”しんどさ”を感じない作品でした。
生きている側と死んだ側の再会について、5つのエピソードが登場します。
使者と書いてツナグ
死者と生者を再会させる力をもった使者。使者と書いてツナグと読みます。
ある意味、あの世とこの世を繋ぐ人だと最初は思いました。
使者と呼ばれる人間が窓口になって、依頼人の依頼を受けて、会いたい死者に交渉するんだ。会うつもりがあるかどうか、気持ちを確認して、承諾が得られれば、その人に会うことができる。
本文より P268
再会する決まりが3つあります。
- 反対側にいる人へ会えるのは「生きている間に1回、死んだ後に1回のみ」
- 生者からの依頼に死者の承諾があれば会える
- 会える時間は一晩、満月の日が1番長い
ちなみにツナグへの依頼料は不要で、社会貢献のようです。
再会を願う5つの想い
1つの物語内に5つのエピソードが書かれ、最後の最後で全ての内容がつながっていきます。
ひとつずつネタバレにならないよう気をつけて書きます。
1,アイドルの心得:突然死したアイドルに会いたいと願う、地味なOL女性。
2,長男の心得:家業を継いだ不器用な長男と、ガンで亡くなった母の再会。
3,親友の心得:親友を事故で亡くした女子高生の秘密と嫉妬の再会。
4,待ち人の心得:失踪した女性と残された男性の7年越しの告白。
5,使者の心得:両親を亡くしたツナグに選ばれた少年が会いたい人。
これ以上ないくらい簡潔に書くとこうなります。
物語の深さを全く伝えきれない、自身の力不足に落ち込みます。ぜひ、実際に小説を読んでください。
僕は3,親友の心得がお気に入りです。
私より先に、誰かを会わせるわけにはいかない。喧嘩別れした、本当だったら会うのが世界一気まずい親友に、私だって会える資格があるとは思わない。だけど、こうするより他にないのだ。彼女の「一回」を、私が奪うしか。その機会を、私が潰すしかない。
本文より P199
5つのエピソード中で、1番強い印象を受けましたね。
自分だったら誰に会いたいと願うだろう
生きている側が再会を願う理由は様々です。
過去のお礼を伝えたい、過ちを懺悔したい、未来の相談をしたい、消えてしまった訳を知りたい。
死者側も会うことを承諾するのは、なにか生者に伝えたいことがあるから。
でも、そのメッセージが何を意味するのかは、受け手により良くも悪くも変わります。
きっとこの小説を読んだ人は同じことを考えていると思います。
「自分だったらだれに会いたいと願うのか」それも生者と死者の両方の側面から。
どちらもたった1枚しか使えない、再会というチケットを使用することができるのか。
そこまで会いたい人がいるのか、死んだあとに覚えてくれる人はいるのか。
自分に置き換えて考えるキッカケになりました。
会えなくなる前に
1年ほど前に自分の身近な人を亡くしました。身近というよりも「育ての親」と言える人です。
本当は僕のことを1番かわいがってくれた人だけど、まだまだ未熟な自分のせいで「してもらったこと」を今もなお素直に受け入れられずにいます。
もう一生会うことができず、話をすることもできない。小さい頃は簡単にできた会話が、大きくなるにつれてできなくなる。
一度できてしまった距離は簡単に埋まりません。
頭でわかっていても、心がついてこなくて、気づいたときにはもう遅くて。
こんなことを書いているいまでも、悲しいや寂しいなどの感覚はなく、どこか他人事に感じます。
周囲の人がどう思うかは知りませんが、時間が経ったときとんでもなく後悔する自分の姿が浮かびます。
「死人にくちなし」とはよく言ったものです。
亡くなった人と話すことができないので、相手がどう思っているのかは残された生きている人側の想像でしかない。確認することはできないのだから。
この小説を読んだあとは、落ち込んだり悲しんだりする気持ちはありませんでした。逆にすっきりしたくらい。
少しウルウルしたシーンもあります。
かがみの孤城、感想を書きました!!
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